2021年7月30日金曜日

イエスによる病人の癒し その1

「弟子たちは出て行って、いたるところで福音を宣べ伝えた。主は彼らとともに働き、みことばを、それに伴うしるしをもって、確かなものとされた。」マルコ 16:20 

大宣教命令とも呼ばれるマルコの箇所ですが、主は彼らと共に働いて、御言葉に伴うしるしをもって確かなものとされました。この命令は復活の後なので、新しい契約の中に生きる私たちに対する命令としても注目すべき箇所です。つまり、復活の後から始まった新しい契約の教えとしての命令であり、今後はキリストの信者が癒しや悪霊追い出しを通して福音を述べ伝えるようにという事です。信者に伴うしるしとしての癒しであり、これは主ご自身が神の子である事を示す為に行われた癒しとは違います。

癒しの目的

十字架に掛かる前のイエス様の癒しには目的が幾つかありました。それは、癒しや悪霊追い出しがあるなら、神の国が来ているという預言の成就の為です。

「目の見えない者たちが見、足の不自由な者たちが歩き、ツァラアトに冒された者たちがきよめられ、耳の聞こえない者たちが聞き、死人たちが生き返り、貧しい者たちに福音が伝えられています。」マタイ 11:5 

「もしわたしが、わたしの父のみわざを行っていないのなら、わたしを信じてはなりません。しかし、行っているのなら、たとえわたしが信じられなくても、わたしのわざを信じなさい。それは、父がわたしにおられ、わたしも父にいることを、あなたがたが知り、また深く理解するようになるためです。」ヨハネ 10:37-38 

ところで、イエス様が弟子たちとおよそ三年半一緒に伝道していた時は、もっぱらユダヤ人を相手にしていました。従って、イエス様が神の国の福音を述べ伝えていた間は、サマリヤ人の女と会話をした時以外、異邦人の所へ行って福音を知らせた事はありません。何故なら、神の国の福音は、まずイスラエルからというのが主の計画だったからです。

「 むしろ、イスラエルの家の失われた羊たちのところに行きなさい。」マタイ 10:6

「イエスは答えられた。「わたしは、イスラエルの家の失われた羊たち以外のところには、遣わされていません。」マタイ 15:24 

さて、病の癒しや悪霊追い出しは預言の成就の為でしたが、イエス様が最優先させていたのは、実は、憐みの心で人々を救う事でした。実際、苦しんでいる人々を解放してあげる事を第一としていた為に、時には異邦人の時ではないタイミングでも助けてあげた事もありました。

「彼女はギリシア人で、シリア・フェニキアの生まれであったが、自分の娘から悪霊を追い出してくださるようイエスに願った。するとイエスは言われた。「まず子どもたちを満腹にさせなければなりません。子どもたちのパンを取り上げて、小犬に投げてやるのは良くないことです。」彼女は答えた。「主よ。食卓の下の小犬でも、子どもたちのパン屑はいただきます。そこでイエスは言われた。「そこまで言うのなら、家に帰りなさい。悪霊はあなたの娘から出て行きました。」マルコ 7:26-29

父なる神の命令に従っていたイエス様は、「イスラエルの家の失われた羊たち以外のところには、遣わされていません。」と言っています。カナン人の女に対して「子犬」という、彼女にとっては侮辱的とも言える表現を用いたのは、理由があります。イエス様は彼女が契約の民ではない事を示し、その上で彼女の信仰を試したからです。何故なら、この女性は異邦人の立場でありながらその時に癒しを求めたからです。父なる神の計画としては、まず最初に福音はユダヤ人に伝えられるべきでした。主の計画は私たちが信仰を表す事によって変わる事があるのです。実際に、旧約時代でも主は思い直して人々を祝福された事が何度もありました。